脳損傷後の大脳皮質における可塑的変化と機能回復
- 作者: 潮見泰蔵
- 出版社/メーカー: 文光堂
- 発売日: 2015/05/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
機能地図と脳の可塑的変化
近年、大脳皮質の可塑的変化が注目されている。
その背景には、
・シナプス伝達効率の変化(長期増強、長期抑圧)
・発芽
・血管新生
などの関与があげられる。
もう少しマクロ的な「機能地図」(ホムンクルス;脳の中の小人)の観点でまとめていく。
上記画像にて、顔と手の領域が大きいことから、使用頻度の多さや細やかな動きを反映していると考えられる。
運動学習と脳の可塑性を調べるため、使用頻度について検討した。その研究として、
Merzenichらは、
サルに巧緻性トレーニング(穴から餌をとる)を行わせることでパフォーマンス向上がみられた。(エラー減少、指の屈曲回数減少)
⇒指の運動領域拡大
=使用頻度拡大(使用依存性)が一次運動野の可塑的変化を促した。
しかし、難易度が易しいと難しいの2つある場合、難しい課題のみ可塑的変化が生じた。
反復練習、難易度が関与していると推測される。
脳損傷後の可塑的変化
リハビリと機能回復のメカニズム
Nudo(1996)はリスザルを用いて実験をした。
大きい穴と小さい穴から餌をとる練習をさせ、一次運動野(指領域)に人工的に脳梗塞を作成した。5日後から上記練習をさせると、3~4週間後にはpreと同様のエラー値まで回復した。
=機能地図の再構築(可塑的変化が生じた)
↳梗塞時と比べて、指の領域が+3.8%、手首-前腕領域が+53.7%拡大した。
+多用なメカニズムの関与が考えられた。
*自然回復と比較すると
一次運動野の領域が縮小してしまっている!
従って、リハビリは再構築だけでなく、エリアの縮小を抑える。
これは、「学習された不使用」'learned nonuse`による麻痺側の使用頻度低下を表している。
脳内伝達物質の関与
⇒運動機能向上が阻害(遅延、低下)
=リハビリを行うことで必ず再構築するわけではない。
人での研究は…
倫理的観点
実際は皮質だけではなく、放線冠や錐体路障害が生じている。
⇒非侵襲的な計測方法を用いている。
また、重度な人では、連合反応によるアーチファクトの出現や高次脳機能による課題遂行困難など考えられるため、軽度な人を対象に行っている。
CVA後の経時的変化
亜急性期から慢性期にかけての患者様を対象にした研究
本来はみられない同側(非損傷)半球の活動がみられたが、2-3か月でもとの対側半球優位(損傷側)の活動パターンに戻る。
このようなダイナミックな可塑的変化はcritical period が存在するが、すべての患者様にあてはまるわけではない。
長期間続いてしまうと、予後が悪いとされる。
そのため、rTMS、tDCSなどを用い、非損傷側の活動をおさえ、対側半球優位な活動を促していく。
最後まで読んでいただきありがとうございました。