脳卒中後の回復メカニズム④
シナプス形成
脳の可塑性において、神経ネットワークの再構築は重要な過程であり、それはシナプス形成によって成り立っている。
シナプス形成は
興奮性結合と抑制性結合に分類される。
抑制性結合には、シナプス前抑制と、シナプス後抑制が存在する。
シナプス前抑制は興奮性ニューロンとシナプス結合する標的ニューロンとの間のシナプス終末に、抑制性ニューロンから伸びた軸索がシナプスをつくり、興奮性ニューロンからの神経伝達物質の放出を抑制するものである。
これは、すべてのシナプスを抑制することはできず、神経終末接合部を部分的に脱分極させることから、わずかにその興奮は伝達される。
シナプス後抑制は抑制性ニューロンから伸びた軸索が、標的ニューロンに直接シナプス結合し、標的細胞を過分極させる。それにより、興奮性ニューロンからシナプスはあるものの興奮性作用は抑制される。これは標的細胞そのものが過分極となるため、抑制効果が大きい。
抑制性に機能する回路=GABA回路
↳成熟した脳は、余剰な興奮を抑え、除去している。
神経ネットワークレベルにおける可塑的変化機構
脳梗塞の周辺ニューロンは樹状突起を失うが、生きている場合もある。
発症後1~4wは成長促進過程が上昇し、結合性を高める。(Murphyら2009)
Dancause(2006)
CVA後の一次運動野の皮質再組織化過程について
手指は、手指の領域と、前腕の領域の両方からの入力を受ける。
一次運動野の手指領域の損傷により、抑制ニューロンが解除され、手関節、前腕の領域から手指への入力が活性化し、手関節、前腕の領域が拡大する。
それに伴い、運動前野の手指の領域が小さくなる。
対側半球も同様に抑制ニューロンの解除が起き、対側半球の一次運動野、運動前野の手指領域の拡大の可塑的変化が起こる。
⇒この状態が、
シナプス受容体の密度の変化がおこり、新たなシナプスが形成され、神経ネットワークが促通される。
また、損傷部と隣接領域が抑制されて、一次運動野のの手指領域の拡大が起こる。そして、新たなニューロン結合が起こり、軸索萌芽が起き、神経ネットワークが再構成される。
脳の可塑性に影響する因子
伝統的アプローチ
・感覚情報や環境の豊富さ
・感覚-運動系
・それらの遮断や損失
新たな未来へのアプローチ
・移住、移動
・文化、教育
・識字能力