脳卒中後の回復メカニズム⑤
脳損傷後の回復促進因子
脳卒中後の機能回復に及ぼす因子として、
梗塞の大きさ、部位、既往歴、重症度、急性期の介入の量や質、介護人や経済面などの環境などがあげられる。
ここでは、リハビリテーション内容(課題)について着目していく。
反復練習
目的とする動作を習得するには、繰り返し練習することが重要な要素となる。
→CVAもあてはまる。
(Nudoらの研究)使用回数と改善の間に相関アリ。
麻痺患者の使用頻度を調べた研究
・リハビリ場面での使用頻度
上肢・・・32回(PT:12±3、OT:41±8)
下肢・・・357歩(PT:370±32、OT:121±38)
・1日の生活(AM8~PM5)
リハの時間→5.2%
その中で麻痺上肢の使用6%
それ以外の時間は1%しか使っていない。
つまり、、
単に使用回数が少ないだけでなく、麻痺側上肢を用いている時間も短いことが指摘されている。
難易度・やる気
やる気
神経伝達物質:ドーパミン→前頭葉、大脳基底核、帯状回などに作用する。
=運動、学習、快感に関与する。
→CVA後に関わると示唆されている。
CVA患者での研究
1.において有意な運動機能回復(Rivermead Motor Assessment:運動機能全般と上肢機能の評価)がみられた。
したがって、ドーパミン系が運動機能向上の可能性を示唆している。
また、ドーパミン系は達成感などの快感を得たときに多く放出される。
→臨床では、適切な目標、達成感、満足感を得られるようにすると、ドーパミン系の活動を促し、患者の運動機能促進を図ると期待できる。
難易度
難易度に関しても、皮質の可塑的変化に関与しているとされる。さらに、ドーパミンとのかかわりも深いことが分かっている。
サルの研究では
50%の確率で餌が出るように設定すると、ドーパミンニューロンの活動が最も高くなる。
=報酬が50%の確率の課題のとき、もっともやる気up
実際の臨床では、患者個人の背景異なり、80%くらいが好ましい。
※患者に合わせて難易度を調整し、徐々に上げていくことを、「シェイピング(Shaping)」(行動を形成する)(korenのシェイピングの10の法則)
報酬の活用
”褒める”という行為は報酬系として知られている、線条体の活動が高まる。
実際に、リハビリ介入期間に差はなかったが、歩行速度の向上が報告されている。
しかし、言葉遣いやタイミングなどが重要になる。
また、褒める以外にも会話や休憩、ラポールの形成も報酬として挙げられる。
リハビリ時のひとにとって豊かな環境とは
以下の項目を考慮する必要がある。
1)患者間の交流促進
・機能レベルに近い人で、競争的トレーニング
・共同作業
・障害受容の促進
2)やりがいのある課題の遂行
・集中力を要し、興味の湧く課題
・適度な緊張
・病前の趣味、特技と関連させる
3)満足感のあるリハプログラムの提供
・多様性、成功感、疲労感
・明確な目標とフィードバック
→Full time integrated treatment (FIT)プログラム
①能動的に働きかける環境の整備
②週に7日、1日中のトレーニングによる量の確保
③IT技術を核とし、訓練室一体型病棟やLAN,Thの複数担当制などを導入